タイトル: インタビュー:UPS運送業者による2023年大規模ストライキの可能性
発行日: 2023年
ソース: https://note.com/bakuto_morikawa/n/nf18f7ff11a43(2023年6月19日検索)

「国際運送業者協会(IBT、米国とカナダの運送業者労働組合、ティームスターと呼ばれる)」に組織された約34万人のUPS(ユナイテッド゠パーセル゠サービス、米国の貨物運送会社)労働者の契約が7月31日午前0時に満了となる。ストライキの可能性に備え、全国のティームスターは今週初めからストライキの投票を始めた。

UPSティームスターのストライキがあれば、単一企業における労働アクションとしては米国史上最大規模になるだろう。

ストライキの可能性について運送業者がどのように考え、どのように準備しているのかを知るために、私達はUPSティームスターに30年間加入している一般組合員の「ビッグ゠ウィル」゠ピナに話を聞いた。


ブラックローズ/ローサネグラ(BRRN):自己紹介をお願いします。どの辺で活動しているのか、UPSでどのぐらい働いているのか、どんな仕事をしているのかといったことです。

ウィル:ウィル゠ピナ、51歳。ロサンゼルス南東部に住んでいます。この8月でUPSに勤続30年になります。フルタイムの集配トラックドライバーです。最初はパートタイムでした。

BRRN:平均的な労働日はどのようなものか教えてもらえますか?あなたの経験から、UPSで働いていて何か変化などがあれば教えてください。ここ数年間はどんな状況だったのでしょうか。

ウィル:平均的な一日は午前9時に始まって午後7時~9時頃に終わります。新しいテクノロジーが導入されて変わった部分がありますね。以前ならドライバーは道路を知って、その知識を仕事にどう活かすか分かっていなければなりませんでした。今は、ほとんどをコンピュータのルーティングプログラムが教えてくれます。何マイルあるか・1時間に荷物を何個配って何回停車しなければならないのか正確に教えてくれます。ただ、このテクノロジーには道路状況や荷物の重さは考慮されていません。

以前は配達ルートに余裕がありました。基本的に今は、違うルートを通ったり、キャンセルしたりするのは難しい。こうした非現実的な期待に応えられないと、ドライバーはいつも定期的に経営側に追跡される。私達は過度に監督されていて、ハラスメントを受けていると言っても過言ではありません。労働組合がなく、契約による保護がなかったら、私はそこで働いていなかったと思います。

また、余談ですが、私は、歴史的ある褐色の人々の地区でサービスを提供していることを誇りに思っています。これが、私が配達ドライバーを続けてきたもう一つの理由です。

新型コロナウイルスは私の地域にいる全ての人に大きな影響を与えました。最初のパンデミックが起こった時、多くのドライバーは感染を恐れて休職しました。基礎疾患を抱えていたり、ウイルスを自宅に持ち帰って家族を感染させてしまうと恐れたりしたからです。残りの私達はそうした人達をバックアップして仕事をこなしていたものの、私達に立ちはだかったのは過剰な負荷の配達ルートだった。私達は皆、危険な条件の中、12時間交代で働いた。私の場合、多くのクリニックと病院に荷物を運んでいる。毎日、自分自身と家族を危険に晒していた。私の知る限り、少なくとも二人の同僚と一人のスーパーバイザーが亡くなりました。精神的に本当にショックでした。

UPSは、顔色一つ変えずに、利益のために私達を死に追いやっていた。私の家族には、新型コロナウイルスに感染して亡くなった者がいます。2021年春、私はバーンアウトと抑鬱に悩まされ、熱中症になり、2カ月休職しました。これがパンデミックで私が経験したことです。パンデミックのプラス面は、このような信じられないほど虐待的な時期の後に管理層と闘うために、私達が連帯と新たな戦闘性を手にしたことでした。

BRRN:前回、UPSティームスターの契約交渉が行われ得たのは2018年でした。その時の様子について教えて下さい。

ウィル:2018年の契約交渉を主導したのは、ジミー゠ホファ゠ジュニアと荷物ディレクターのケン゠ホールだった。労働組合はUPSと癒着していた。この関係のために譲歩的な契約が結ばれ、2流の低賃金ドライバーを生み出し、一般組合員の間に分断が生まれました。控えめに言っても、この契約は極めて問題でした。

一般組合員がこの譲歩を嗅ぎつけた後で、反対投票運動が生まれました。私は自分がその一端を担ったことをとても誇りに思っていました。私達はすぐさま行動し、組合員に反対票を投じるよう呼び掛け始めた。いよいよ投票日となり、集計の結果、企業に優しい協定を否決できた。達成した時の感動はひとしおで、大きな達成感がありました。

翌日、IBTは3分の2ルールを発動し、ともかく契約を押し通すと発表しました。3分の2ルールを簡単に言うと、投票数が労働組合員全員の過半数に達していない場合、投票した組合員が反対票を投じていたとしても契約を成立させられる、というものです。運動全体に失望感が広がったものの、IBTが私達を裏切ったことに対する不満を私達は決して忘れなかったのです。

BRRN:あなたは、労組改革派の「民主的労働組合を求めるティームスター(TDU)」のメンバーです。この会派に参加したことについて話していただけますか?

ウィル:はい。私はTDUのメンバーです。2年ほど前に加入しました。私は労働組合で活動してきましたが、加入はつい最近のことです。TDUは長年、IBTで大きな役割を果たしてきました。97年のストライキでは陣頭指揮を執っていて、その時私はピケラインにいて『ティームスターの声』を読み、初めてTDUのことを知りました。大分前の話の気がしますが、これが労働組合の急進主義者仲間がほぼ同じ時期に合流する手助けとなっていたのです。最近勝ち得た改革の一つは、先日のIBT大会で、先ほど述べた3分の2ルールが廃止されたことです。これは、一般組合員にとって莫大な勝利です。

BRRN:34万人以上のUPS労働者をカバーしている契約が7月31日に期限を迎えます。IBTは今週正式にストライキ承認の投票用紙を回収し始めました。ストライキの可能性に対して、あなたとあなたが所属する支部はどのような準備をしていますか?

ウィル:ストライキの可能性に備えて、私達の支部は先週日曜日に契約アクション訓練を組合会館で行いました。この訓練には南カリフォルニアUPSティームスターなら誰でも参加できました。「レイバー゠ノーツ」に行って、組織作りの講座を受講したことがあれば、どんな訓練か分かるでしょう。また、私達は、駐車場集会や教育資料配布などの計画もしています。こうしたことはこれまでも行われていますが、どんどん増やしていくつもりです。

もうご存じだと思いますが、ストライキ承認投票は進行中で、承認票が圧倒的になるはずです。開票は一週間ぐらい後になる予定です。それに備えて、私達の労働組合活動家達は、「メディーヴァル゠タイムズ」のパフォーマー、ハリウッドの「ライターズ゠ギルド」のデモ隊パームデールの「アマゾン゠ティームスター」といった他の産業にいる労働者のピケラインを訪れています。

BRRN:労働者は、ストライキの可能性に備えてIBTとは別に組織を作っているのでしょうか?

ウィル:労働者は労働組合とは別に組織を作っています。特に、パートタイムの人達はそうです。連帯を示すために、「赤シャツの金曜日」を開催し、参加者は皆赤いものを身に着けて、自分達が団結していること・自分達に干渉してはならないことを管理層に示しています。それはまた、給与が飢餓賃金で大多数が金銭的に赤字だと示す象徴的ジェスチャーでもあります。こうした非常に重要な労働者達を、私はとても誇りに思っています。彼等が数十億ドル規模の企業の屋台骨なのです。この契約は彼等の問題に関係するものになるでしょう。

BRRN:一般組合員として、次の契約闘争であなたにとって最も重要な問題は何でしょうか。これまで要求されるべきだと思っていたのに要求されなかった問題はありますか?

ウィル:私にとって重要な問題は労働条件、暑さ、トラックのキャブ(運転する場所)にあるカメラのような侵襲的テクノロジーです。最近の交渉の中で、労働組合は新車へのエアコンの搭載を全面的に確保できました。これはとても重要です。不当な生産基準とハラスメントも私にとっては大きな問題です。私は自分の全キャリアでこれらと闘ってきました。

IBTがNDA(守秘義務契約)の下で活動しているため、どの問題が省かれているのか私には具体的に言えません。これは私達の労働組合活動家が取り組んでいるもう一つの闘いです。交渉は100%透明でなければなりません。

経済対策について私が希望しているもう一つのことは、インフレに連動した賃金です。生活費は高騰しているのに、この仕事が楽になることはない。言うまでもなく、毎年UPSは記録的な利益を上げ続けています。

BRRN:あなたの体感では、ストライキの可能性が出てきたことで、どの程度まで一般組合員が結集するようになったでしょうか?言い換えれば、ここ数カ月で一般組合員の積極的な参加が増えていると思いますか?

ウィル:そう、一般組合員は非常に積極的です。UPSで過ごした中で、これほどまで組合員が参画しているのを見たのは1997年のストライキ以来です。私達の組合会館は毎月人で溢れています。また、組合員がアマゾンの新しい組織委員会に志願しているのを目にしています。そこにも空席はありません。労働運動に参加するには本当にエキサイティングな時代です。

BRRN:「全米自動車労働組合(UAW)」も9月に「ビッグ3」との契約満了を控えています。UPS労働者はこうした動きに注目していますか?

ウィル:私の答えはイエスです。二つの労組が何をするのか注視しています。ご存じの通り、UAWは改革派を選出し、私達同様、腐敗した労組官僚が推進した裏切り契約と闘っています。春季「レイバー゠ノーツ゠トラブルメーカー学校」のTDU講座にUAW労働者の一人が参加していました。また、705シカゴ支部から来たショーン゠オルという名の同志は、連帯を築くべく、UAWの一般組合員を「ティームスターの木曜日」会議に招待しています。こうした形の労働者協力が、戦闘的な闘争型労組を再建するために重要となるでしょう。

BRRN:UPSでストライキが起こった場合に、外部の人達が支援できる方法は何かありますか?

ウィル:ストライキが実際に起こったら、私達のピケラインに姿を見せて、そこで手伝ってくれるだけで支援になります。寄付は極めて重要で、水とか、準備が整えばストライキ基金への寄付ももう一つの支援方法となるでしょう。食べ物の持ち込みも助かります!この闘争に勝つにはコミュニティの支援が不可欠です。労働運動の支持者を刺激し、彼らが姿を見せ、歴史の一部になるなんてことが実際に起きたら、歴史的ストライキになるでしょう!


「ビッグ゠ウィル」゠ピナは、ロサンゼルス南東部の30年にわたるベテランUPSティームスターで、労働組合急進主義者。ツイッターアカウント@bigwill72で彼をフォローできる。