タイトル: 占領反対戦線の声:パレスチナ人アナキストへのインタビュー
発行日: 2023年10月17日
ソース: https://note.com/bakuto_morikawa/n/ne8f11e24d1c4(2023年10月26日検索)
備考: 訳註:原文にはアラビア語での回答も掲載されていますが、割愛しました。関心ある方は原文を参照してください。

75年にわたるイスラエルのパレスチナ占領は、新しくさらに恐ろしい段階に突入した。この段階で、民族浄化に対して闘争するパレスチナ人に発言の場を提供しなければならない。

ブラックローズ/ローサネグラ(BRRN)は、ヨルダン川西岸を拠点とする小グループ「ファウダ」(パレスチナ人アナキスト組織と名乗っている)に現在の闘争について見解を聞いた。「ファウダ」は私達がこれまで知らなかったグループのため、ここで紹介するインタビューと公開チャンネルで見られる以上の情報が私達にはない。「ファウダ」の政治・戦略・活動を私達が充分理解していないため、このインタビューを公表したからといって彼等を完全に支持しているというわけではない。ただ、このインタビューが米国の革命家とパレスチナの青年闘志との間により多くの繋がりを創り、お互いに関する知識と理解を深める一歩になってほしいと願っている。

私達の政治に共通点や相違点があろうとなかろうと、私達は、米国が資金提供する民族浄化の暴力に抵抗する現場の武装勢力の見解に耳を傾けねばならないと確信している。この短いインタビューが帝国主義と入植者植民地主義を弱体化させる私達自身の活動を強化する一助になれば幸いである。

翻訳を明確なものにするための編集を除き、インタビューの内容は変更していない。インタビューの実施と翻訳に協力してくれたパレスチナ人とアラビア語を話せる友人達に感謝する。また、極度の不安と暴力が渦巻く中で私達の質問に思慮深く答えてくれた「ファウダ」の代表にお礼申し上げる。


1.BRRN:あなた方のグループについて教えてもらえますか?どのような活動をしているのか、「ファウダ」と他のパレスチナ人政治グループ--DFLP・PFLP・ハマス・ファタハなど--との違いは何かなどです。

1.私達のグループは「パレスチナのファウダ運動」として知られています。メンバーはパレスチナ内外の若い活動家と学者です。

私達の目標は、様々な政治的・知的思想や潮流を持つ全勢力を結集し、パレスチナの不当占領と人種差別のシオニスト思想と戦いに焦点を当てることです。だから、私達は、ユダヤ教徒・改宗者・イスラーム教徒・キリスト教徒といった若者達と良好な関係を築いています。

つまり、多くのパレスチナ人が、シオニストによる人種差別で不当な占領行為に反対しているものの、団結できる一つの軸を見つけられていないという理解です。だから、人種差別とシオニスト゠アパルトヘイト体制との戦いに集中せず、互いに戦い合っているのを幾度も目にしているのです。

ここで、私達は、様々な党派間の調停役を担い、パレスチナ人が持つ可能性と能力全てを結集してアパルトヘイト体制と戦おうとしています。

私達は様々な活動を行っています。例を挙げると、闘争の方法と方法論やアナキズム思想をパレスチナ人青年に教えています(教育部門)。様々な夜警と抗議行動(一部は平和的で、一部はブラックブロック型)を調整しています(実行部門)。パレスチナとパレスチナ人に関わるニュースやあらゆる事、そして、イスラエルの軍隊と治安体制が行っている事を公表しています。個人的自由と社会的自由の弾圧・パレスチナ人住宅の破壊・子供の殺害・パレスチナ人に対する虐殺と大量殺戮などです(ニュース部門)。そして、パレスチナの歴史・パレスチナ人とイスラエル人の紛争の歴史・こうした歴史から新しい世代が直面すると思われる知的差異に関する重要な情報を広めています。この地では激しいメディア戦争があり、事実が歪められ、イスラエルに都合の良いものにされているからです。ご存じのように、イスラエルにはアラビア語の24時間放送チャンネルがあり、歴史的事実を歪曲し、過去と現在現場で起きていることについて誤った物語を広めています(メディア部門)。

これが「パレスチナのファウダ運動」の簡単な概要です。

2.BRRN:パレスチナの現状について米国の同志達に何を知っておいてほしいですか?

2.この問題について私は、米国だけでなく、世界中の同胞達全員に言いたいのですが、グローバル゠メディア帝国の言説を絶対に信用しないでください。私達はいつも見てきました。グローバル゠メディア帝国は、ニュースを歪め、グローバル植民地主義とシオニストの占領に有利になるようにしているのです。

ここパレスチナで、私達は苦しんでいます。最低限の生活必需品を奪われて苦しんでいるのです。皆さんに知っていただきたい。一日たりとも--断言しますが、文字通り--一日たりとも、イスラエル軍が、通りを歩いているパレスチナの若い男女を逮捕しない日はありません。

ヨルダン川西岸のパレスチナ地域は、ほぼ毎日、停電と断水に悩まされているのが常です。イスラエル軍はパレスチナ人地区の一部を強制移住させようとしてきました。そこを掌握し、新しい入植地を建設するためです。以前は、軍隊があらゆる弾圧的・暴力的方法を使ってこうした地区を一掃し、パレスチナ人をその土地から移住させていました。しかし、現在、以前と同じ目標、つまり強制移住を達成するための柔軟路線を採っています。この柔軟路線には、電気と水を長期間遮断する・当該地区での廃棄物を回収せずに悪臭を放つようにする・当該地域近くで包括的軍事演習を行って地域のパレスチナ住民に損害を与えるなどシオニスト占領軍が実行している様々な非人道的行動があります。これは、ここパレスチナで、特にヨルダン川西岸で、一年中起こっている事の中でも些細で分かりやすい例にすぎません。

現在、この暴力的戦争のただ中で、イスラエルの治安部隊は、ヨルダン川西岸での衝突勃発を恐れて、この地区にいる多くの民間人を具体的嫌疑なしに逮捕している。これがまさにこの地区の情況です。逮捕だけで済めばいいのですが。大抵は、逮捕後に刑務所で酷い拷問をされます。こうした組織的行為の結果、死ぬことすらあります。

もう一つ知っていただきたいのですが、パレスチナ自治政府とマフムード゠アッバース大統領は私達を、パレスチナ人を、全く代表してはいません。私達は当局を拒否し、アッバースとその大臣全員を拒否しています。皆さんがシオニスト占領軍とパレスチナ自治政府との安全保障調停協定をご存じかどうか私には分かりません。数年前にパレスチナ自治政府が締結した協定で、安全保障の観点から占領国に奉仕するという内容です。つまり、パレスチナ人青年活動家が何らかの形でシオニスト占領軍と戦い、占領軍が彼等を逮捕できなかった場合、パレスチナ自治政府が彼等を追跡し、逮捕し、占領軍に差し出すのです。その後、差し出された青年男女がどうなるか誰にも分からない。こんなのが、私達も、他のパレスチナ人も代表してなどいない。パレスチナの街では完全に拒否されている。しかし、残念ながら、国連は公式にも国際的にも認め、米国が支持しているのです。

3.BRRN:この一週間はあなた個人にとってどのような一週間だったのでしょうか?

3.同志、一週間とか二週間とかいった問題ではないのです。私達は一年中弾圧され、個人の自由と社会的自由を剥奪された状態で生きています。確かに、先週は過去数カ月よりも悲惨で痛ましいニュースが多かった。パレスチナ自治区全体で多くの親類や友人達が死んだという知らせを受けました。本当に辛い。ヨルダン川西岸とガザには多くの友人達がいます。ガザのパレスチナ住民は今とても危険な情況で生きています。3~4日以上、彼等(イスラエル占領軍)はガザ地区の電気と水道を止めています。電気が止められると、多くの社会サービス、特に病院が動かなくなる。ガザ住民への爆撃は24時間続いています。真夜中であっても、彼等はこの狭い地域を爆撃する。イスラエルは完全にこの地域を封鎖している。逃げようがない。占領軍は人道支援がガザに届かないよう妨害する。占領軍は食料を禁じ、水を禁じ、薬を禁じ、何もかも禁じている。ガザは小さな地下牢になり、あらゆる方面、あらゆる場所から爆撃されています。想像してください。母親が、幼い乳児が怪我をして血を流しているのを見ても、治療してくれる病院が停電のためにないのです。この母親の気持ちを、どう言い表すというのですか?

同志、ここで起こっていることを言葉では言い表せません。占領軍のために、そこにいるシオニズムの存在のために、この地域は地獄になったのです。

4.BRRN:パレスチナのどの運動がパレスチナ人の未来にとって最も希望を持てると思いますか?またその理由は何でしょうか?例えば、ナーブルスの「ライオンの巣」とか、他にも労働者闘争などがあると思うのですが。

4.私達に必要なのは、解放の可能性を信じ、パレスチナの様々な運動・潮流との団結を築くために活動する青年運動です。これまでの経験からすれば、一つの運動だけではパレスチナの解放を導く大きな成果はあげられません。私達は、イスラーム教徒・ユダヤ教徒・キリスト教徒・改宗者・アナキストなどパレスチナ自治区に存在する思想が何であれ、お互いに折り合いをつけねばなりません。私達が求めているのはこれです:シオニズムと戦い、パレスチナを解放し、自由を取り戻すという一つの旗・一つの目標の下に全ての人が団結するのです。もちろん、パレスチナ自治区には多くの運動があり、その一つが「ライオンの巣」です。しかし、ライオンの巣は唯一の運動ではありません。労働者闘争を含め他の潮流・運動が多くあり、皆全力を尽くして奮闘しています。しかし、占領軍、そして裏切り者のパレスチナ自治政府が行っている厳格な治安情況と組織的弾圧政策のために、公然と目に見える有意義な形で現れてはいません。なぜなら、私達は常に注意深く慎重でいなければならないからです。だから、私は、あなたとのインタビューをオーディオやビデオではできませんでした。

5.BRRN:2021年、シェイク゠ジャラ地区のパレスチナ人家族立ち退きに反発して、ヨルダン川西岸地区・ガザ地区のパレスチナ人、さらにはイスラエルの市民のパレスチナ人までもがゼネストに参加しました。この時期の操業停止とゼネストにどのような役割があるとお考えですか?

5.イスラエルにおけるゼネストの段階は終わったと思います。もちろん、ストライキの重要性とその有効性を否定したいのではなく、ここパレスチナの情況と経験からすれば、唯一の解決策はアパルトヘイト体制に対する闘争、もっと言えば武装闘争なのです。

占領軍はいかなる犯罪も、不正も、迫害も躊躇せず行います。

職業に就いていたリ、店を経営したりしていて、ストライキをしたところで、店を盗まれて別なシオニストが手に入れたり、仕事を首にされて別なシオニストがその仕事に就いたりするのがオチです。容易いことなのです!

こちらの情況は米国で起こっている事とは全く違うのですよ、同志。

6.BRRN:少数のアナキストと社会主義者が思っているように、多数のイスラエル人労働者階級がシオニズムを放棄する望みがあると思いますか?それとも、入植者植民地主義への愛着が強すぎて克服は無理だと思いますか?

6.ここパレスチナ自治区にいるシオニスト達は、この土地は自分の土地であり、ユダヤ民族は選民だというイデオロギー原理に基づいてここに来ました。当然、この原理を信じ、このイデオロギーを受け入れている全ての人が、容易くシオニズムを放棄できるわけがなく、他者の自由と人間同士の平等原則を認めるわけがありません。

しかし、私達はシオニズムとユダヤ教を区別しています。私達にはヘブル語を話し、トーラーを信じるユダヤ人の友人達がいて、占領国に対抗する私達の活動の手助けさえもしてくれています。だから、望みはあると思います。こうした人達の数が増えて、その多くが、特に労働者階級が、ユダヤ教とは何の関係もないこの人種差別イデオロギー原理を放棄するよう期待しています。私達は彼等を歓迎し、両手を広げて迎え入れます。そして、共に働き、平和の裡に共存できるでしょう。

7.BRRN:パレスチナ解放のために米国の同志達ができる最も有効な行動は何だと思いますか?

7.あなた方にできる最も重要なことは、パレスチナ人のメディアサポートだと思います。イスラエルによる誤った物語に頼らず、米国の人々にパレスチナ問題の現状をありのまま説明してください。パレスチナで起きているニュースや出来事を掲載してください。パレスチナ人の様々なウェブサイトには占領国が行っている日常的犯罪の動画・画像が数多くあります。私達もこのニュースをインスタグラム@fauda_palestine とテレグラム゠チャンネル@fauda_psに掲載しています。このニュースを翻訳し、米国の同志達に事実を伝えてください。ニュースを受け取ったり、出来事をフォローしたりする際に、当局のメディアや米国・イスラエルのチャンネルを唯一の情報源にしてはなりません。パレスチナのメディアもフォローしなければなりません。パレスチナのメディアは非常に厳しい報道管制を受けています。この報道管制を打破し、パレスチナ自治区の現実の一端に触れてみてください。