タイトル: 別な緯度帯でのコロナウイルスと制限
サブタイトル: 資本主義の周縁部に目を向ける
発行日: 2020年5月
ソース: https://note.com/bakuto_morikawa/n/naf1a75a4d3f9(2023年10月28日検索)

2020年現在、私達が苦しんでいる国際的パンデミックによって新自由主義グローバリゼーションの終焉が加速していると考える人もいる。しかし、少なくともいわゆる「第一世界」では、この将来的シナリオは全く起こりそうにないようだ。不安定な保健制度や社会激動への対策の欠如によって、資本主義体制を最低限疑問視するようになるだろうと予感させるものの、危機を得意としている資本主義体制は容易く崩壊しない。激動の時代は早くも到来した。このシナリオに達する前に、私達は、ネオコンとナショナリストに対峙する頑強な社会的・政治的組織を作ってしっかり準備をしておくべきだったのだ。

世界の指導者が交代する激動の時代に、危険な権威主義が垣間見えている。脆弱な状態、もっと酷い極度の貧困へ引きずり込まれたくなければ、国際的社会運動はこうした傾向と闘わなければならない。変革に向けた社会行動には、一般民衆にとって重要な議論を集約し、それらを表現し、集団的自律と自主組織を促す強力な社会的アジェンダが必要である。フランシス゠フクヤマは1989年に歴史の終わり、とりわけ階級闘争と革命の時代の終わりに関する小論を出版した。しかし、歴史を救い出し、新自由主義が止めようとしているエンジンを再起動しなければならない。

私達を苦しめている資本主義は、他の緯度地帯において、コミュニティの社会的帰結・基本的経済に壊滅的な影響を与えている。幾つかの地方では何十年も労働経験が変わらず、新自由主義の採掘主義によって田舎でも都会でも多くの家族の社会的身体が完全に丸裸になっている。明らかに、生活を維持しているのは労働者だ。大地に種を蒔く人々、基本的ケア・ヘルスケア・食料を保証する人々だ。社会システムは、仲介人・投機家・投資家がいなくとも完全にうまく機能できる。現在の緊急事態で推奨されているソーシャルディスタンスが特権となっている地方もあるというのに、支配者どもは道徳的スピーチをする。支配者など不要なのだ。

ラテンアメリカは抵抗し、主張する

ラテンアメリカには強力な社会運動があり、社会的孤立政策による非正規労働の破綻をものともせず、パンデミック封じ込めの最前線で活動している。コミュニティ運動は最低限必要な食料を提供し、病気の人やケアが必要な人を特定し、脆弱な住民層を保護している。こうしたネットワークは連帯の絆を維持し、民衆諸階級のニーズを置き去りにしたのは国家だと指弾する。例えば、サパティスタの勢力圏では、人との接触を止めるのではなく、兄弟姉妹として親しく付き合うやり方を一時的に変えるよう呼び掛けていた。

米国で公衆衛生緊急事態の最中に武装した極右が恐怖を生み出している一方、他のアメリカ諸国には麻薬密売人がおり、同じ社会的機能を果たしている。昨年からラテンアメリカを席巻している民衆叛乱の波は、現在の緊急事態を克服した後も確実に続くだろう。こうした集団行動を行う社会的・政治的理由が、より一層正当なものと見なされ、差し迫ったニーズとして露呈しているからである。ブラジルでは、社会的分断が決定的で、大統領のボルソナロという人物は軍の司令官に事実上置き換えられ、隔離された中で政治判断が行われている。さらに、コロナウイルス感染者が、アマゾンの先住民族コミュニティにもいると最近確認された。このコミュニティはこれまでも貧困と社会的排除に苦しめられてきた。これを引き起こしているのは、こうした社会集団の生物学的要因ではない。先住民族地域での侵略的国家政策によって押し付けられた数多くの不平等な諸条件なのだ。

アフリカとアジア、格差社会において継続的パンデミックの中で共生する経験

アフリカでは、数多くの不平等な社会的原因のためにパンデミックがおずおずと広がっている。何よりもまず、アフリカ大陸は、第一世界の採掘主義のために、多くの疫病を常に経験しているのに、疾病を発見する公衆衛生システムが限定的で非効率的である。同時に、これは、ナラティヴが周縁からではなく中央からどのように書かれているのかを雄弁に物語っている。パンデミックが北半球の典型的市民に影響を与えているため、公的世界史に今後も残る国際的出来事として取り上げられているからだ。アフリカで最も多い発症例がある国は、欧州新植民地主義の観光旅行・金融の中心地、地中海沿岸に面している。大陸の反対側、第一世界ビジネスの要所である南アフリカも感染者数がアフリカ大陸最大で、既に、消毒のために警察が市場を強制退去させたり、物品が不足したり、食べるために食料を盗む社会グループが暴動を起こしたりしている。

確かに、パンデミック当初の排外主義の爆発は別な言説傾向によって打開されたものの、アジアはこのウイルスの起源・蔓延源だと指摘され、世界的なスティグマを背負っている。他の緯度地帯同様、これは、アジアの社会的コミュニティが大きな脆弱性リスクに苦しんでいることと無関係ではない。中東は、難民キャンプに悩まされ、住民が追放され、パレスチナのように犯罪的に封鎖されている。この地域の権威主義政府の計画的措置のために、その衛生状態は酷い状態にある。インドは、深遠な社会運動プロセスの最中に、ウイルスの蔓延が憂慮すべき規模で拡大している。広大な人口過密国で、何百万もの人々が極度に不安定な暮らしをし、日々の仕事がほぼない状態で、コロナウイルスそのもの以上に死にかけているのである。

国際的集団行動の未来と壁の亀裂の拡大

この国際的緊急事態は、資本主義の社会的・経済的破綻の輪郭をさらに浮き彫りにしている。それぞれの世界地理において様々な政治体制が壁の中で維持されているが、壁の中で階級の亀裂が拡大している。体制側は金融経済を保護する施策を即興的に行う。労働者はまたもやこの危機の代償を払うことを認める側になる。こうした方策が、権威主義傾向を克服する変革の可能性を開く。民衆の社会闘争と主導権が解放プロジェクトと結び付き得る地方では、様々な形でこうした変化が発展していくだろう。壁の亀裂に新たな情況が現れる。それは別種の社会的実体・強化された自治体型経済・コミュニタリアンの観点を持つ生活組織となってしかるべきなのだ。