原文:https://libcom.org/library/ethiopian-anarchist-perspective-war-tigray
The Final Straw Radio(TFSR)による、東アフリカに拠点を置くアナキスト゠グループ「ホーン゠アナキスト」のエチオピア人メンバー、アナーへのインタビュー。アナーは自分が属するアナキスト゠グループ・クーデター後のエチオピア・ティグレ州で行われている武装闘争の背景・戦闘を行っている様々な党派・ティグレ州住民が被っている強制退去と暴力について語っている。注意:この記事には紛争における性暴力の描写が含まれています。
訳註:民族の名称が混同されやすいため、示しておきます。エリトリアの低地に住むイスラム教徒のティグレ語話者は「ティグレ人」(Tigre people)。エリトリアの高地に住むキリスト教徒のティグリニア語話者は「ティグリニア人」(Tigrinya people、Tigrigna、EPLFはティグリニア人)。エチオピア北部高地に住むキリスト教徒のティグリニア語話者は「ティグライ人」(Tigrayans、TPLFはティグライ人)。ティグレ語とティグリニア語は異なる言語です。(bakuto morikawaより)
The Final Straw Radio, Anner, Horn Anarchists
ティグレ戦争に対するエチオピア人アナキストの見解
TFSR:よろしければ自己紹介をお願いします。また、共同プロジェクトである「ホーン゠アナキスト」について紹介してもらえますか?グループではどのような価値観を共有し、何を行っているのでしょうか?どこを拠点として、どのぐらい活動していますか?
アナー:私はアナーという名で呼ばれています。私は自分の代名詞として「彼女」を使います。「ホーン゠アナキスト」は共同プロジェクトとして一年前に始まりました。その目的は、アナキズム思想とその価値観、そして「ホーン」の政策を広めることです。メンバー個々人は、様々な反ファシスト組織・フェミニスト組織・労働者組織・難民連帯組織に関わっていたのですが、その後、アナキズムの価値観と自分達の活動の一部を一つの共有的共同組織にしました。昨年の私達の活動はほぼネット上でした。メンバーの中には海外移住している人や「アフリカの角」(ホーン゠オブ゠アフリカ、アフリカ大陸東端の半島)を拠点としている人がいて、実際に集まるのが難しく、今のところ草の根プロジェクトを行えていません。でも、私達はこのプロジェクトを行いたいと思っています。最近のティグレ州の実情と危機を踏まえて、スーダンに集まって、ジェノサイド戦争のために故郷を離れねばならなくなった人達への難民連帯活動をスーダンで行う予定です。
TFSR:確認ですが、皆さんを団結させているのは、アナキズムのヴィジョンですか、それとも共通の価値観ですか?そのヴィジョンや価値観がどのようなものか話してもらえますか?
アナー:共同グループとして、実際に私達が掲げている価値観は、平等・親切・相互扶助・連帯・自発的行動主義です。特に、メンバーの中には、私達が行ってきた様々なボランティア活動に参加して急進的になった人達がいます。また、「余りにも多くのアナキズム文献を」読みすぎて急進的になったメンバーもいます。様々な組織サークルに参加して急進的になったメンバーもいます。これらが、基本的に私達が共有して掲げているいくつかの価値観ですね。
TFSR:現代のアフリカで私が耳にしたことのあるアナキズム組織と言えば、大部分が南アフリカのZACF(ザバラザ無政府共産主義戦線)の支部による様々なプロジェクトか、サム゠ムバーと「覚醒運動」のような人々、ホスニー゠ムバーラクに対する反乱中・反乱後のナイジェリアやエジプトのサンジカリズム運動です。「アフリカの角」におけるアナキズムの情況や運動について少し話してもらえますか?経済思想や宗教思想、反宗教思想に関係しているとか、世界中のアナキスト゠コミュニティの多くで大ブームになっているメタルやパンクのような音楽ジャンルやサブカルチャーに関係しているとか、地域的・民族自治運動と関係しているとか。あなたの見解を教えてください。
アナー:まさしくご指摘の通りです。「ホーン゠アナキスト」を結成するために集まった時、私達がやりたかったことの一つは、「第三世界」でのアナキズムの研究でした。私達が学んできたアナキズム文献の大部分は極めて欧州中心的だったので、アナキズムの歴史が私達の世界でどのように役立つのか理解したかったのです。その点で言うと、それほどうまく行かなかった。私達が見つけたアナキズム運動やアナキストは非常に限られていました。ナイジェリア・南アフリカ・アルジェリアにいくつか、スーダンとエジプトにも少し。でも、多くはありません。特に、ホーン地方にはありません。その理由の一つは、アフリカのこの地域、特にホーンの高地に移住してきた人達は極めてヒエラルキー型の社会集団で、同時に信仰心が強いからじゃないかと思います。ここではキリスト教正統派(エチオピア正教会)とイスラム教が主な二大宗教で、どちらもとても信心深い。これが、強力なヒエラルキー型共同体を維持して、何世代にも伝わってきた。そして、その宗教が国家と強く結びつき、自分達の宗教・神を愛していた民衆は同時に国家をも愛さずにはいられなくなった。だから、アナキズムはこの地域では全く邪魔者扱いされてきたのです。
ホーン地方、特にエチオピアとエリトリアでのアナキズムの現れ方は、とても興味深い。独自の運動として現れなかったので、他の運動とは全く異なるものとして認識された。実際、アナキズムが歴史に現れたのは、マルクス-レーニン主義などの共産主義運動、共産主義組織が、互いに自分達に望ましくない運動を指し示すレッテルとして使った時でした。彼等は、共産主義国家を通じて強力な国家を建設しようとし、他者をアナキストと呼んで大衆の信頼を失わせ、大衆が憎しみ・敵意を持って見るようにする一つの方法でした。基本的に他者の評判を傷つける方法だったわけです。このようにアナキズムは利用された。アナキズムそれ自体ではなく、「アナキスト」という言葉がレッテルとして使われていたのです。
TFSR:今はティグレ州北部地方に対する「軍事活動」直後の時期だと言われていますね。間違っていたら指摘してほしいのですが、「軍事活動」を行っていたのは、現在大規模な撤収をしているエチオピア中央政府軍で、少なくとも、他の二つの国、そして地域的・民族的な民兵と交戦していました。ティグレ州の人々に対する略奪と性暴力の報告が広まっています。あなたがご存じのことを共有させてもらえればありがたいのですが。特に、エチオピア国家は、実際にそこで行われていることを口外させないようにしているので。ホーン地方の、特にエチオピアの政治と歴史に詳しくない人達には、紛争の歴史・様々な国家当事者と非国家当事者・そのモチベーションは少々分かりにくいかもしれません。面倒でなければ、内戦とその後の情況の概要や簡単な説明、そして今何が起こっているのか教えてもらえますか?
アナー:ここで何が起こっていたのかを理解するために、歴史を簡単に紹介します。エチオピアは三千年にわたる帝国建設の歴史を誇っています。帝国建設・国家建設プロセスの中核は、聖書のソロモン王が先祖だという主張でした。様々な王と女王が自分達はソロモン王の子孫であり、だから支配する神聖な権利を持っていると主張しました。このソロモン的傾向は、1974年の革命までこの地方を動かす最強の力の一つでした。1974年の革命で、クーデターが最後の皇帝を打倒し、軍事政権が権力を奪取して共産主義国家を樹立しました。この共産主義軍事政権は、とても抑圧的で暴力的な独裁国家を創り、当時この国で活動していた他の左翼グループに対する赤色テロ運動を始めます。この時、数多くの反乱グループ・ゲリラ兵士団がいました。TPLF(ティグレ人民解放戦線)は、エリトリア人民解放戦線やオロモ解放戦線などと並び、ゲリラ兵士団の一つでした。その後、こうしたゲリラ兵士団がEPRDF(エチオピア人民革命民主戦線)という名で同盟を組んで、軍事政権を打倒し、EPRDFは次の30年間この国を主導します。TPLFはこの同盟の中心的・支配的メンバーの一つでした。
TFSR:TPLFについて少し話してもらえますか?「先住民族アナキスト連盟」のブログの記事で、あなたのグループは彼等をマルクス-レーニン主義グループだと述べていたと思います。彼等について少し話してもらえますか?ティグレ州の人々との関係はどうなのでしょう?最近、アビィ゠アハメドによるエチオピア中央政権との間で紛争が急増していますが、そこではどのような役割を演じているのでしょうか?
アナー:TPLFにはとても興味深い歴史があります。当初、勇敢な人達が集まってこの組織を作ったのですが、その後にこの国最大の武装闘争組織になりました。国家との関係も絶え間なく変わっています。当初は政権に対する反乱グループでしたが、後に権力を手にしました。ただ、その前に、政党・武装反乱グループとして宣言と綱領を作っています。自治や自決、そして、国内の統一が不可能に思われる場合は独立すらも目的としていました。これが後に民族的連邦主義に繋がり、論争の絶えない憲法条項、第39条になりました。この条項は、統一が不可能な場合に諸民族が分離する権利を与えています。しかし、TPLFの人達は関係を絶え間なく変えました。当初、TPLFはコミュニティからとても愛され、崇敬されていました。反逆者・ゲリラ兵士だった時にコミュニティがTPLFを作ったのです。権力を奪取した後は、国家の道具になってしまい、国家に内在する暴力をTPLF・EPRDFが引き継いでしまった。EPRDFはTPLFが主導した連合です。国家の暴力と政党の暴力は区別できません。彼等は、それまでTPLFを崇敬し、その言質・献身・規律を称賛していた人々を痛めつけ始めたのです。TPLFは勇気・規律・献身の模範でしたが、権力を手にしてから、官職についてから、国家暴力を続けた。ティグレ州の人々だけでなく、エチオピア国家の他の部分とも関係が変わっていきました。三年前にアビィ゠アハメドが権力の座に就くと、ティグレ州の人々との関係を再考する機会がTPLFに訪れました。彼等は連邦政府の職を辞任し、メンバーはティグレ州に戻り、過去に自分達が何を行ってきたかを振り返りました。そして、自分達がティグレ州の人々を充分代表しておらず、過去27年間でそれほど役立つことを行ってこなかったと人々に謝罪しました。この時点で、ティグレ州の人々には選択肢が全くなくなっていた。個人的には、包囲攻撃だったと思っています。アムハラ地方から来たファノ自警団がティグレ州への道路を封鎖し、非常に憂慮すべきヘイトを説いていたからです。ティグリニア語を話す人々について、国家が後援するヘイト説教が行われていました。ティグリニア語はティグレ州の公用語です。彼等は民族的にティグライ人として分類されていませんが、国家プロパガンダ機関は残虐行為を語る際に「ティグリニア語を話す」というフレーズを使っていました。国家装置はこれを過去30年間行ってきたのです。
アビィは、この地域で、改革派で民主派で新自由主義の勢力だと称賛されていました。彼はそれを証明しようと、様々なドキュメンタリーを作り、国有メディアで流したのです。これは、基本的に国家の暴力を暴露しました。特に、拘束された人がどのように扱われているのか、公式ではない刑務所・地下刑務所・ガレージ刑務所がどのようなところなのかといったような。きわめて残忍なことが行われていた。その説明責任はTPLFにあるとされた。TPLFはエチオピア全土で行われた全ての残虐行為を説明する義務があると見なされた。TPLFは、この国を動かす同盟、EPRDFの一部、EPRDFのメンバーに過ぎなかったのに。EPRDFの他のメンバーはなおも権力の座にいました。なおも公職に就いていた。後に、EPRDFは「繁栄党」に改称されました。この党(PP)は現在も政権の座に就いています。PPは、EPRDFとは著しく対照的です。アビィが議長で指導者というほぼワンマン政党です。そして、この党は、基本的に、個人としてのアビィのあり様を反映しています。とても自己陶酔的で権威主義、周りで起こっていること全てを統制しようとします。多くの人が感じていることの一つは、民族的連邦主義とこの国の様々な地方の自決に対する脅威です。現在のティグレ戦争は…その一つの側面は、このイデオロギーの違いです。一方は、アビィの中央集権国家、アビィが主導して、全てを管理したがり、地方の長を中央から任命しようとしている国家です。もう一方は、TPLFのような党派による抵抗です。TPLFは非常に強力です。30年間権力の座にあり、しっかりした構造を持ち、この地方で極めて優勢で、この地方を管理し、州議会の議席のほとんどを占めています。TPLFは中央政府と敵対できる勢力、多分、アビィと連邦政府に敵対できる唯一の地方勢力でしょう。他の勢力は皆、アビィの庇護の下にある。アビィは地方の長となる人を指名できる。民衆には、長を選ぶことも、自分達の州を誰が管理するのか選ぶ上で発言の機会すら与えられていない。これが、この戦争のイデオロギー的側面の一つです。自律的管理・自治が、ユニタリアニズム・中央集権独裁と戦っているのです。
TFSR:何がTPLF部隊によるENDF(エチオピア国防軍)への攻撃を引き起こしたのでしょうか?
アナー:誰に聞くかによって変わりますね。ティグレ戦争には様々な原因があります。一つは、先ほど述べた通りです。TPLFの強さはアビィにとって脅威です。アビィは、沈黙を求めていて、反対意見を犯罪にしたいと思っている人です。だから、当然、自分が言っていることに反対で、多大な影響力を持つ強力な地方には敵対する。これは、ティグレ州で行われた選挙に、はっきり表れています。中央政府、連邦政府は新型コロナウィルスを口実に選挙を延期すると決めたけれども、ティグレ州は独自の選挙管理委員会を設立し、選挙を行った。パンデミックを真摯に受け止めたやり方で地方選挙を行った。人々が確実にソーシャルディスタンスを取るようにし、必要な措置を取って、選挙を確実に行えるようにした。多分、これはTPLFが取った最も強い措置の一つで、アビィは全く不愉快だった。一方、国家は、TPLF部隊がENDFを攻撃したと言います。警告をした後に、TPLF同盟軍がエチオピア国防軍の北部司令部を攻撃し、その結果、本格的な戦争になったという報告はありますが、真実は分かりません。
TFSR:コミュニケーション手段の封鎖という点で、多くのジャーナリストは、現地に入れず文章も送れない事態を騒いでいます。あなたとこうして話をできて私はとても嬉しく思っています。コミュニケーション封鎖は、ティグレ州に限られていたのでしょうか、今も続いていますか?私はいくつかの理由から軍が封鎖を行っていると思うのですが、あなたは何故、封鎖の強制が軍に、ENDFにとって重要だと考えているのでしょうか?
アナー:ENDFと繁栄党はとても暴力的に対応していました。ティグレ州のあらゆるコミュニケーション手段を意図的に切断しました。電子通信・インターネット・電話回線サービス・電気・水道すらも。州全体で完全な停電状態でした。何が起こっているか分かりませんでした。家族がそこにいたのですが、何か月も家族と話せませんでした。同時に、完全なメディア封鎖もされていました。ENDFは結果を考える必要がなく、外に知られることはないだろうと考えて、暗闇の中で好き放題やっていたのです。
TFSR:ありがとうございます。あなたは、アビィ゠アハメドが国際的にかなり信頼されているとおっしゃっていました。彼は、エリトリアとの協定に調印したことでノーベル平和賞を受賞したと思いますが、紛争がエスカレートして以来、ソマリアとエリトリアから軍隊が侵入していると報じられています。また、エチオピア政府は、確かスーダン政府だと思うのですが、スーダンとも対立していると聞いています。確かならば、ティグレ州の多くの人々は暴力や強制退去から逃れてスーダンに行っていますね。この危機に国境がどのような役割を果たしているのか、そして、他国がどのように関わっているのか少し教えてもらえますか?
アナー:スーダンのような近隣諸国は興味深いやり方で反応しています。スーダンは、この戦争のために強制退去させられた難民を受け入れています。6万人以上の難民です。国境がENDFに封鎖されていなければ、この数はもっと増えていたでしょう。逆に、エリトリアはこの戦争にとても暴力的に関わっています。TPLFとエリトリア人民解放戦線はデルグ政権中に同盟を組んでいました。どちらもゲリラ兵士団だった時です。その後、エリトリアは分離し、エチオピア-エリトリア戦争が起こりました。ほぼ30年にわたる憎しみがそこにはあった。アビィがノーベル平和賞にノミネートされて受賞した理由の一つが、エチオピアとエリトリアの平和をもたらしたためだとされています。しかし、エリトリアとの和平プロセスには主要な闘争当事者は、つまりTPLFは、全く含まれていません。アビィと独裁者イサイアス゠アフェウェルキとの和平協定でした。メディアは、和平協定が何を意味し、どのような性質を持っているのか語っていません。振り返ってみれば、戦争協定に近かった。平和協定と言いうよりも、大量虐殺戦争協定に近かったと思います。本物の和平プロセスであれば、何よりもまず、交戦中の主要当事者が含まれるはずですが、この和平協定はそうではありません。エリトリアとの和平の本質は、TPLFの排除だったと思います。
TFSR:他の場所、マイカドラで、六百人の民間人が、大部分が民族的にアムハラ人とウェルケイト人が虐殺されたという報告があります。TPLFに共鳴する民兵と警官隊が行った虐殺だと非難されています。これは、一方の側にいる人々が虐殺を行ったと見なされている一例です。しかし、ティグライ人に対してアムハラ人が襲撃と大虐殺を行ったとも報道されています。また、ヒューマン゠ライツ゠ウォッチなどの組織による報告では、制服を着た軍隊が襲撃していたとも言われています。難しい問題ですが、このことについて話してもらえますか?現状についてあなたが耳にしていることで、海外のオーディエンスに知ってほしいことがあると思います。これは、エチオピアの多民族社会がもっと大きく崩壊する兆候だと思いますか?
アナー:メディア封鎖はこの戦争に対する海外の反応に大きな影響を与えました。戦争が始まって最初の数カ月は、ティグレ州の州営メディアにしか接することができませんでした。これはティグレ州のプロパガンダです。そして次は、連邦政府のプロパガンダ。しかし、一般の人々がどのような経験をしているのかを実際に知る方法はありません。どちらもプロパガンダを流すだけで、現地で何が起こっているのか報告されない。私達が虐殺について最初に聞いたのは、何とかしてスーダンに逃げ延びた難民からです。彼等は、自分達が見てきたこと・経験したこと・戦争の恐怖を語っていました。しかし、アビィは、こうした難民は殺人者でTPLFが組織した青年達だと言って、こうした報告は信用できないと国会に訴えました。彼は、難民を殺人部隊だとレッテル貼りし、難民とその説明の信頼性をなくそうとした。でも、国際メディアはティグレからスーダンに逃げた難民と話した。その話が、何が起こっているのか私達が耳にした最初のニュースでした。逃れた人達の説明、これが、私達が戦争について聞いた最初の説明でした。その後、人々が、特に、他国の市民権、二重市民権を持つ人達がアディスアベバに来ました。エチオピア-米国人やドイツ-エチオピア人といった人達でした。大使館が彼等をアディスアベバに呼び、帰国させる手段を示したのです。彼等はさらに多くの経験をしていました。私達が聞いた最初の報告はスーダンの難民からでしたが、その後に、メックエルなどの都市の限られた地域で電話が通じるようになりました。通話状態は本当に悪かったのですが、それでも私達は何が起こっているのか実態を知ることができたのです。その後に、ビデオや画像などの証拠となる映像が現れるようになりました。
マイカドラの大虐殺は、戦争を正当化するために利用されています。連邦国家がティグレに対する戦争を正当化するために利用した二度目の大事件でした。最初はENDFの北部司令部の襲撃、二度目がマイカドラの大虐殺です。様々な主張がされていますが、誰が加害者なのか今も分かりません。TPLFの同盟勢力だと言う人もいます。ENDFだと言う人もいます。アムハラ民兵やファノ自警団だと言う人もいます。いずれにせよ、全てのグループが納得する調査は行われていません。私達に分かっているのは、報復が行われているということです。殺されたのがアムハラ人であれ、ティグライ人であれ、報復が行われているのは確実で、報復を含めた戦争が持つ様々な特徴が出現しています。これまで様々な虐殺を耳にしてきました。アクスムでの虐殺…かなりの数の場所で虐殺が行われていると聞いています。今のところ最大の虐殺はアスクムで、教会の中で八百人が殺されました。マイカドラもそうですが、どれも国家は報告していません。約四カ月になりますが、マイカドラは今も通信時間を占領されていて、他の場所は違います。なので、プロパガンダの道具として使われているため、報道が本物かどうか疑わざるを得ません。
だから、私には分かりません。でも、このことで多民族連邦主義が崩壊するとは思っていません。崩壊の兆候はありますが、それはこの戦争ではない。戦争は、長年にわたるヘイト説教、はっきり言えば、ファシズムのためだと思います。アムハラ民兵とファノ自警団が戦争に参加するようになった理由の一つは、ティグライ人が住んでいる土地の一部を、ティグレ州西部の大部分を以前から要求していたからです。この場所は最も大きな被害を受けた地域だと思います。ここは最も被害が大きく、民族浄化に近い状態でした。以前ティグライ人が住んでいてアムハラ人に奪取された地域には、現在、ティグライ人は住んでいません。これが、彼等が戦争に参加した理由の一つです。こうしたことから、私は、この戦争は、多民族連邦主義の崩壊というよりも、ファシズムに起因すると考えています。
現地で実際に何が起こっているのかについてはっきりした証拠がなく、戦闘中の両者が、各々が所有するメディアで発言している。私は、国際社会は希望的で楽観的で、アビィの言葉を信じようとしていると思います。さらに多くのダメージを出さずにTPLFを排除するための外科手術だと考えているのでしょう。しかし、明らかにそれ以外のことなのです。それどころか、これは、あらゆるティグライ民族への集団的処罰です。ティグレ州に住んでいる人達だけでなく、ティグレ州の外に住んでいる人達に対しても行われています。彼等は民族的にプロファイルされています。私が言っているのは、ティグレ州に住んでいない人達のことです。彼等は逮捕され、拘束され、令状なしに家宅捜索され、虐待され、拷問され、治安部隊だけでなく一般の人々にも路上で罵られている。私の意見では、この集団的処罰は実際、2016年に始まりました。当時、ティグライ人は、ティグライ民族だという理由で、何年も、何十年も暮らしてきた故郷から逃げねばならなかった。彼等は、逃げねばならず、ティグレ州に戻らされた。それ以来、道路は封鎖され、物価は暴騰し、エリトリアへの道路もあったものの、都市の物価は非常に高く、すでに述べたように、ヘイト説教、ティグライ民族に対するヘイトスピーチ、レッテル貼りが行われていた…首相は彼等を昼間のハイエナと呼んでいた。こうしたことが長年にわたって作り上げられてきたのです。
国際社会は、単に、希望を持ってアビィの言葉を信じていただけだったと思います。しかし、その後、これは外科手術などではなく、アビィの激怒を受ける側にいたのは民間人だったとはっきりしました。現在、国際社会はとても驚き、アビィに働き掛け、圧力を掛けて、少なくとも、人道的支援を民間人に分配し、そして、民間人を保護し、保護するだけでなく、民間人の殺害を止めるために必要な措置を講じさせようとしています。現在、経済制裁、支援の削減を行うという脅しもしています。国際社会はここで起こっていることを本当に恐れているようで、そのことをアビィに言い続けています。しかし、アビィの行動はほとんど変わっていません。ティグライ民族は弾圧されています。不法に拘束され、不法に調べられ、逮捕されることさえあります。ティグリニア語の発音がある名前というだけで、道端で嫌がらせを受け、拷問されています。身分証明書がティグライ民族の起源を持っていると示していると、国際線に搭乗できません。エチオピア航空は、出身民族を確認し、ティグライ人を搭乗させないために、地元の身分証明書を提示するよう求めています。
また、強制収容所のようなものがあるという指摘もいくつかありました。これが真実かどうか検証できないのですが、確かに強制収容所についても耳にしています。多くのティグライ民族は解雇されています。彼等は、特に政府の仕事に就いていた人達は、停職を命ぜられています。ティグライ民族の軍関係者は皆、停職させられています。連邦政府の職員や、連邦政府の下で運営されて国の各地で活動している組織の職員も、ティグライ民族だという理由で停職させられています。多くの家主も、ティグライ民族だという理由だけで、立ち退かせ、退去するよう伝えています。これは徐々に悪い方向に行き、ティグライ人は、街路やコーヒーショップやホテルで自分の言語を話すことすらできなくなりました。自分達の言葉を耳にすると国家や治安部隊、ファシストさえもが、何かしでかすだろうと心配し、恐れたからです。
*****内容に関わる注意:以下の段落には性暴力のどぎつい記述があります。懸念されるのであれば、以下の段落を飛ばしてください。*****
私は、最近、ENDFによって殺された民間人についてソーシャルメディアで広まっている映像を見ました。彼等はとても残虐なやり方で虐殺されていました。レイプも最大の懸念の一つです。ENDFが管理している都市ではレイプが蔓延しています。ENDFとエリトリア兵士は非常に幼い少女達の集団レイプを行っています。当初、対象はティーンエイジャーでしたが、現在、13歳未満の子ども達に関する報告もあります。その理由としてエリトリア兵士はエイズに用心しているからだと言われています。少女達はエイズに感染していないという前提で、幼い子ども達を集団レイプしているのです。何が起こっているか、彼等が何をしたかと言えば…先日、ある記事を読みました。その記事に書かれた少女のビデオも見ました。彼女は5日間にわたって23人の兵士に集団レイプされ、ゴミとビニール袋と釘さえをも膣に詰め込まれたのです。広まっているビデオは、複数の医師が彼女に詰め込まれたものを取り出しているものでした。残虐さは想像を絶しています。人間的感情がないのです。
*****内容に関わる注意はここまで*****
TFSR:ティグレ州の紛争とティグライ人の弾圧に対する国際社会の反応は、あなたの目にはどのように映っていますか?
アナー:この地方で物資の分配について話す際、何がここで効果的なのかを理解しなければなりません。国際的支援組織は食物・薬・医療用品・食糧を準備し、荷造りし、こうした物資をトラック何台分も抱えて、配布を待っています。しかし、各地域に届かないのです。政府とENDFが届けさせないのです。飢えている人々、空腹・のどの渇き・医薬品の欠如で死にそうになっている人々を助けるのが難しいのは、主としてこのためです。
TFSR:「ホーン゠アナキスト」は、支援物資の分配や実際に起こっていることについて、ソーシャルメディア上で多くの批判をしています。批判の中には、西洋のソーシャルメディアユーザーが「あぁ、誰かがもう何かやっているよ。自分が考えなくても良いんだな」とか、「何ドルか送ってあげよう。何回かクリックしたし。自分にはもう何の責任も関係もない。やることをやったわけだし」といった反応に対するものがあるのではないかと思います。何か方法が…国際治安部隊の介入を得ようとして国連に矛先が向くわけですが、外国人が、物資を送るとか、食料を手に入れるとか、実際にティグレ州の人々を支援するためにできることはありますか?
アナー:私達の批判は、主に、様々なクラウドファンディング゠アカウントのためです。こうしたアカウントを始めたのは、戦争を支援している主戦論者達です。ティグレ州に到着させる手段もないのに、ティグライ人の名で、ティグレ州の人々に配ると言ってお金や支援を集めるなど間違っています。問題は、食物や医療品の不足ではありません。分配の準備をしている支援組織はあるのです。彼等はトラック何台分もの物資を持っています。単にアクセスできないだけなのです。ティグライ人やティグレ州住民の名でお金をいくら集めようが、配る手段がないのですから、集めたお金などどうでもいい。だから、私達は、支援を集め、クラウドファンディングを組織することで、ティグライ人に同情しようとする素朴な試みを批判しているのです。
TFSR:このことを懸念しているオーディエンスの中には、圧力をかけられる場所を見つけようとする人がいるかもしれません。例えば、大規模な国際空港のある都市に住んでいればエチオピア航空の区画があるかもしれないので、エチオピア航空のような企業を調べるとか、何らかの外交的な政府系ビルとか。
アナー:国際社会がティグレ州の人々との連帯を示すには様々な方法があります。最も基本的なものは、ハッシュタグを使ったツィートです。確実に言葉が表に出るようにするのです。コミュニケーション封鎖とメディア封鎖をしたところで、何が起こっているのか世界は知っていると確実に示すのです。何が起こっているのか人々が気付くよう可能な限り声高に述べねばなりません。個人的には、現時点で、ティグレ州は世界の中心であるはずだと思っています。誰もがティグレ州に目を向けねばなりません。21世紀に新たなジェノサイドが起こっているのです。誰もが分かっています。指導者達は明日にも表に出てきて、二度と引き起こさない、こんなことが二度とないようにする、と言うでしょう。しかし、これはたった今起こっているのです。私達はこれを乗り切ろうとしているのです。このままにさせておけない。黙って見過ごせるわけがない。少なくとも、関心を高め、全ての人に理解させ、地元の代議士に理解させ、対応させ、これを止めるために何を行っているのか投票した人達に報告させることはできるでしょう。
現時点で、その大部分がスーダンにいる強制退去させられた難民を支援する方法もいくつかあります。私達の共同グループは、スーダンにいる難民と共に相互扶助支援を組織しています。様々な支援の取り組みは、スーダンの難民に対してだけでなく、ティグレ州の難民にも行われています。アクセスは以前よりましになりました。解放されて自由になったとは言えないものの、比較的良くなり、まだ限られているものの、ティグレ州で支援物資を分配しようとする取り組みも行われています。ティグライ人オーガナイザーを援助するという方法もあります。こうしたオーガナイザーは世界中にいて、抗議行動・抗議集会・国連へのアピールや自分が住んでいる国の政府へのアピールを行おうとしています。ジェノサイドを止めさせ、ティグレ州からエリトリア軍を立ち去らせ、ティグレ州からアムハラ民兵とファノ自警団を立ち去らせるようアビィに圧力を掛けようとしています。彼等が行っている残虐行為は本当に想像を絶するもので、身の毛もよだつものだからです。
また、大切なのは、ティグライ人の連帯を示したいと思っている人達が、代議士に、自国の代議士と政府がこのジェノサイド戦争を止めるためにエチオピア政府に圧力を掛ける措置の説明責任を課し、自国と国連に介入と活動を行うよう圧力をかけることです。民間人を保護する責任があるのですから。現状がどれほど悪いのか、五万人以上が死んでいると確認されていますが、多くの場所は今もなお連絡がつかず、連絡がつく場所であっても報告は完全ではない。もっと多くの犠牲者がいると思われます。犠牲者は増え続けています。
TFSR:少しばかり、理論的世界に戻りたいのですが、この武力紛争終結後を考え、あなた方のグループは、分権的で草の根で反ファシズムで反ナショナリストの地域へどのように移行していくのか、たくさん話し合っていると思うのですが…
アナー:ええ、私達はたくさん議論しています。私達が望んでいるのは…そうですね、エチオピアには様々なファシストがいて、非常に興味深い。エチオピアの正当性を信じているファシストや民族ナショナリストのファシズムもいます。彼等は皆右翼でファシストです。ある種のファシズムと戦おうとして、別なタイプのファシズムの一員になって、自分のグループに行く。この国には現在、政府が支援し、政府に称賛されているファシズム的グループが数多くあります。
私達が望んでいるのは、私達が…私の意見を話しましょう。個人的に、私は労働者の運動を始めたい。労働運動は様々な民族グループや様々な信念を横断すると思います。そして、エチオピアの貧困者は自分達の問題を最も良く知っていて、自分達の代わりに戦うと主張している人は誰であれ、基本的には自分達を人間の盾として使うのだと分かっています。こうしたファシスト集団と組織のために、エチオピアでは様々な場所で毎日多くの人が死んでいます。彼等は自分達の政治要綱を声高に主張する。彼等はメディアを管理し、資金を管理している。人々は、何らかのグループに同調しないと、様々な集団に属する人達が一つになって抑圧者と戦うための肥沃な土壌がなくなってしまうと恐れています。
TPLFがこの国を抑圧していると思われている理由の一つは、お話ししたように、TPLFは少数派だからです。彼等は全ての民族集団を見て回って抑圧しているわけではありません。抑圧と弾圧をしているのは、体制です。オロミア州の人々は、必ずしもTPLFに弾圧されてはいない。弾圧しているのは、権力を持ったグループの人達です。民衆の感情は今も次のようなものです。「私が弾圧されているのは、彼等が特定の民族集団にいるからだ。私がこの弾圧と戦うには、自分の民族集団と同盟を組み、他の民族集団と戦うしかない。」これが、自分達以外のほとんど全ての集団に対する敵意を生み出す。その点で、階級闘争について話すことすら難しくなっています。
ただ、理想的には、私は階級運動を行いたいと思っています。階級は今やエチオピアの政治にはとても重要な要素です。政治が、アイデンティティ、具体的に言えば民族的アイデンティティに基づいているからです。従って、何らかの民族集団にいるか、それとも、自分のアイデンティティに触れてはならず、一つの国・一つの神・一つの民族を信じなければならないと考えるファシストか、どちらかです。この闘争は非常に厳しい。
TFSR:数年前にボスニアで組織を作っている人と話したのですが、あなたとの会話はその時の会話を思い起こさせます。彼は、民族的区別の制度化について語り、そして、実施されていなくとも、「自治」の制度化と民族的違いの定式化は、人々が地域で共に暮らす基盤となっていると話していました。明らかに、人が他の集団に抑圧されないよう保護し、自分達の宗教を実践し、自分達の言語を話すといったことをできるようにし、同時に、それを政治体制へと制度化して、公的資金や社会的プログラムといったことを実施する代議制度の基盤にする。また、民衆間の違いを結束させてもいた。ユーゴスラビアの崩壊後、チトーの国家と同じように不完全ながらも、誰もが様々な形でこの階級理念の下に団結していた。私が話した人は、互いの分断を意味していた民族的党派から人々が抜け出す可能性にとても興奮していました。これは、とても重要で決定的なことのように思えます。私には全く納得できるものでした。
アナー:そうですね。民族的アイデンティティを中心とした組織作りを犯罪にしようと結集しているグループがいくつかあります。エチオピアの歴史を通じて…エチオピアは帝国主義の国です。イタリアのファシストと戦っても、自分達のファシズムとは戦って来なかった。エチオピアは拡張主義国家で、帝国で、支配的文化に同化し続けてきた。人々が民族的アイデンティティに基づいて自分の集団の権利のために戦っている時に、私は批判できません。彼等は自分の言語を話せず、余りにも長い間、国教がキリスト教正統派だったために自分の宗教を実践できなかった。自分のアイデンティティを糾弾し、国家アイデンティティとされているもの、高地人とキリスト教のアイデンティティに合わせねばならなかった。でも、エチオピアのほとんどの人は、民族的連邦主義に反対しています。様々な民族とナショナリティ、分離に至るまでの完全な自決について反対しています。民族的連邦主義は、これを実行しようとする様々な政治政党の戦場となってきました。様々な民族集団の活動家は、もし、あれこれの要求が満たされないのなら分離すると主張する。正直なところ、私は、自分達の権利を守ろうと闘争している人々、特にマイノリティの闘争には反対しませんが、いつまでこれが続くのでしょうか?他者化は大きな問題です。特に、現在、アビィ政権が全てのアイデンティティを一つに融合する一つのエチオピアという旧来の国家を建設しようとしているのですから。エチオピアは、実際には、様々なアイデンティティを特定の支配的アイデンティティにする坩堝と呼べるでしょう。
TFSR:時間を割いて私との会話にご協力いただき、ありがとうございました。本当に感謝します。
「ホーン゠アナキスト」の見解をもっと知りたければ、ツイッターの@HornAnarchistsをチェックするか、ウェブサイトHornAnarchists.NoBlogs.Orgを訪れてほしい。大部分がアムハラ語とティグライ語だが、オンラインの翻訳サービスを使えば自国語で読める。
アナーによるリンク:
- tghat.com にもティグレ州の情報が豊富にある。
- Dengelat Massacre: https://twitter.com/katie_polglase/status/1365442094790279170
- Axum Massacre: https://www.amnesty.org/en/latest/news/2021/02/ethiopia-eritrean-troops-massacre-of-hundreds-of-axum-civilians-may-amount-to-crime-against-humanity/
- Ethnic Cleansing: https://www.nytimes.com/2021/02/26/world/middleeast/ethiopia-tigray-ethnic-cleansing.html
- Ethiopia Map on Twitter: https://twitter.com/MapEthiopia