タイトル: 自由と生存のメーデー2021
著者名: 名波ナミ
発行日: 2021
ソース: https://note.com/naminanamix/n/n8903cdabace0(2023年4月21日検索)
備考: だいぶ経ってしまいましたが、5/8の自由と生存のメーデー2021でスピーチした内容をここに記します。(名波ナミより)

この社会の一端で生きていると、正気を保つのが難しいと感じることがずっとあります。
毎日毎日おかしなニュースが流れてくる。
まるで、おかしな磁場が発生しているような、毎日息を吸って生きているだけで前後左右を知るための磁石がいつのまにかおかしくなっていくような、何がおかしくて何が正しいのか分からなくなるような、そんな気がしてしまいます。
生きているだけでなんだか苦しい、そういう実感があります。

病院のベッドを減らし医療を減らし福祉を減らし、あらゆるケア責任を家庭(もっと言えば家庭の女性)に押し付けてきた結果として、
「平和の祭典」とかいうもののために助かるはずの大勢の人々が死んでいく、
「安心安全」のために外国人が入管に収容され、
ゴミのないキレイな街づくりのためにホームレス女性が殺される、
今私たちの目の前で起きているのはそう言うことです。
実際、オリンピックに向けて「安心安全」「治安」を高めるために外国人を収容するんだと、法務省の文章にはっきり書かれています。

3月に名古屋入管で、スリランカから来たウィシュマさんが収容と医療放棄の末亡くなったことはみなさんご存知だと思います。
彼女が入管に収容されたきっかけは何だったか、皆さん知ってますか。
同居していた男性からDVをうけていた彼女は警察に相談しました。
しかしそれを受けた警察は彼女を保護するのではなく入管に送り、そして殺したのです。


私たちにはDV防止法という法律があります。そこには「被害者の国籍、障害の有無を問わず人権を尊重し、安全確保と秘密の保持に配慮しなければならない」とはっきり書いてあります。


なのに、なんで?


警察は私たちを守ってくれると多くの人は信じています。
しかし、警察はDV防止法より「外国人はよそ者の不穏分子だ、何をやってもいいんだ、人権なんか守んなくっていいんだ」という差別と偏見を優先し、その結果一人の人を殺したのです。

このニュースを聞いて私は本当にショックを受けました。

この国は、この社会は一体何から何を守ってるんですか?
この社会の言う「安心安全」って、何なんですか?

安全とは、金持ちの運動会のことではない
安全とは、強制送還ではない
安全とは、無期限収容ではない
安全とは、外国と戦争することではない
安全とは、監視カメラではない
安全とは、歌舞伎町のネオンを消すことではない
安全とは、夜の仕事を見殺しにすることではない
安全とは、日本人の男性のヘテロセクシャルのシスジェンダーの健常者の高学歴の金持ちのエリートの安全ではない

安全とは、家に帰っても殴られないこと
安全とは、家で誰かの顔色を伺ってビクビクしなくてもいいこと
安全とは、したくないセックスをしなくてもいいこと
安全とは、おいしいご飯を食べられること
安全とは、いつでも病院に行けること、必要な検査とワクチンを受けられること
安全とは、困った時に相談でき、助けてくれる人がいること
安全とは、必要な福祉に頼れること
安全とは、お金が無くても教育を受けられること
安全とは、国籍や国境に関わらず、自分が選んだ暮らしたい場所で暮らせること
安全とは、DVを相談した人が送られる場所が入管と呼ばれている死の収容所ではなく、その人を守りケアするシェルターであるということ。


そう言う社会を私たち、ここにいる私たちで作り出すことはできませんか。


私は安心して暮らしたいです。
誰もが安心して暮らせるべきです。

今日は「自由と生存のメーデー」です。
私は言っておきたいのですが、安心安全のない自由なら私は要らない。
なぜなら安心安全のない自由は自由と呼べないからです。


私は、国家と資本主義が今私たちに差し出してくる偽物の平和や安心安全じゃなくて、
本物の平和、本物の安心と安全を求めます。
それが私の求める「自由と生存」です。


でも、それは私一人ではつくることはできません。
私一人がどんなに強大な力を持ったとしてもそれは不可能です。
人と人が集まり、信頼しあうこと、水平的な相互扶助の関わりからしか、それは始まらないと私は信じます。
そして、水平的な相互扶助とは自分たちの生活や関係性の中にある権威主義、資本主義、家父長制を倒していくことでしか、手にすることはできません。
今ここにいる、居合わせた全ての人たちは全員、そういう社会を作ることに責任があると私は信じます。
安全で安心できる場を、社会を、ここから作り出しましょう。


ありがとうございます。