タイトル: サパティスタの自治:アナキスト同志へのインタビュー
発行日: 2023年12月
ソース: https://note.com/bakuto_morikawa/n/n771f3cb8faac(2023年12月21日)

先月、私達は、サパティスタの新しい自治構造の概略を示したコミュニケの英訳(拙訳はこちら)と、この運動について執筆してきたビル゠ウェインバーグへのインタビュー(拙訳はこちら)を掲載した。私達は、チアパスに長く関わってきた匿名のアナキスト同志にもビルと同じ質問をした。ここにその返事を公表する。


あなたの経歴とチアパスとの関係をお話しいただけますか?

チアパスに関連する経歴という点で言えば、私は、1994年/1995年に参加し、1995年春にCCRI(先住民革命秘密委員会)の会議に出席できました。当時、サパティスタはサンアンドレス和平協定に向けて政府と交渉していました。私は二人の欧州人同志と共にこの会議に出席し、そこには一人の叛乱軍指揮官も同席していました。この会議で、ダビド指揮官は、叛乱軍を支援するだけでは孤立してしまうが、基礎コミュニティを支援すれば叛乱軍の維持に繋がるため、基礎コミュニティの支援が最重要だ、と指摘していました。この会議で、私が活動する基礎コミュニティプロジェクトが決まり、叛乱軍に必要な支援の種類が規定されました。その後30年間、私はこれらの仕事を続け、サン゠クリストバル゠デ゠ラス゠カサスで数年間生活していました。

サパティスタが自治構造変革について発表した宣言を読んで、この変化をどのように解釈しますか?この宣言が発表した変革や変遷の本質は何だと思いますか?

この変化はかなりダイナミックです。要は、これまでの意志決定方法が通用しなくなったため、実施されているのです。彼等は30年間団結を維持しようとし、挑発に乗らないようにしてきました。マルコスが指摘してきたように、これは同時に、融通の利かないヒエラルキーのピラミッドを導入することになりました。結局、政府は元々の和平合意を酷く台無しにし、代理組織が基礎コミュニティのメンバーを殺害し、EZLNに断りなく定期的に土地を収奪しています。こうした事実に対処できなかったのです。

ここ数年間麻薬カルテルの関与が増加し、この地域の背景がかなり劇的に変わりました。EZLNも変わらねばなりませんでした。そうしなければ、様々なコミュニティの一貫性を徐々に失い、存在意義が薄れてしまいます。政府は積極的に対抗組織活動を行っています。例えば、サパティスタの学校近くに学校を作り、学生に認定学位を与え、無償の教育推進者を有償の教職に就けています。麻薬カルテルの側では、多額の金を提示し、極度の暴力で脅しています。現在行われている分権化によって、暴力から身を守る場合だけでなく、以前は自分達で決められなかったワクチン接種やその他多くの問題についてもコミュニティが対応できるようになり、攻撃的行動さえとれるようになりました。ただ、挑発と不和に陥る危険はあります。二つのコミュニティが正反対のことを決めるかもしれないからです。しかし同時に、コミュニティは、遥かに多くの柔軟性・迅速な対応力・自分達の未来に対するさらに多くの制御力と自律性を持てるようになります。

サパティスタのコミュニティを脅かしている麻薬カルテル・メヒコ警察・軍などの勢力について、ここ最近何が起きているのかもう少し説明してもらえますか?

麻薬カルテルは常にチアパスの風景の一部でした。最近まで、この地域の主要カルテルはシナロア゠カルテルでした。暴力が本格的に始まったのは、他の二つのカルテル、ガルフ゠カルテルとハリスコ新世代カルテル(CJNG、ロス゠セタスの分派)が、領土と活動(プラサとして知られる組み合わせ)の支配権を巡ってシナロア゠カルテルに挑み、非常に攻撃的に動き出した時です。特にCJNGは非常に暴力的で、チアパスで一度も見たことのない規模で誘拐・大量殺人・住宅放火・強奪などを行っています。この過程で、彼等は警察・軍・地元政治家を買収しています。地元の準軍事組織と犯罪組織は、以前は州警察や軍の諜報機関と提携していましたが、現在は様々なカルテルと提携し、同時に警察と国家機構も足並みを揃えています。

自治構造の分権化はこれまでの構造が提供できなかった弾力性を与えてくれると思いますか?

分権化は、運動を分裂させる危険があるものの、恐らく、現在の暴力と国家による対抗組織活動の猛攻に抵抗する唯一の手段でしょう。

このことは、反ヒエラルキー型非国家主体が、麻薬カルテルや準軍事組織といったヒエラルキー型の非国家主体や半国家主体とどのように戦えるのかについて、何を物語っているのでしょうか?アナキズムに対するよくある反論は「警察がいなくなって、ギャングがやってきたらどうするのか?」です。この新しい変化は一つの回答でしょうか、それともサパティスタは答えを持っていないと示しているのでしょうか?

最新コミュニケの一つで述べているように、サパティスタは、恐れずに物事を実践します。教室やコーヒーショップに座って理論を唱えるのではなく、直面している問題を実際に解決しようとするのです。団結が常にサパティスタの長所です。コミュニティは地元レベルで地元地域の防衛を強化し、見知らぬ者をコミュニティに入れないようにしています。そして、最も上手く行った取り組みに目を向け、他の場所で再現しています。これにはサパティスタ以外のコミュニティ゠メンバーとの緊密な連携が必要でした。私が目にしているのは、過去には見られなかった程のコミュニティ゠レベルでのグループ間団結です。これは同時に、コミュニティが政治的境界を超えて各々のコミュニティに適した方法で教育や保健などに対処できるようにしています。過去にはサパティスタかどうかで区別されていました。逆に今では、たとえサパティスタとしての政策の一貫性が損なわれても、コミュニティを強固にするコミュニティ規模の合意形成をしているのです。

最後になりますが、分権化がコミュニティを強制力から守る試みだとすれば、孤立主義の危険をはらんでいるかもしれません。しかし、サパティスタは分権化を通して国際主義的観点を維持しようとしているように見えます。サパティスタが地元で行っていることを世界情勢とどのようにリンクさせ続けているのかコメント頂けますか?

個々のコミュニティの防衛には、既知の活動家を含めた部外者(カズラネス)がもはやコミュニティに入れない、という意味もあります。同時に、彼等は世界中の他のグループと接触し、そうしたグループを理解し、同盟を結ぼうとしています。これは新しい情況です。過去には、様々なグループがチアパスにやってきました。今回初めて、EZLNは他のグループと接触し、訪問しています。彼等は個人レベルでもこれを行っています。2000年代中盤、彼等は私に接触し、私達は私の役割を再定義しました。来年は、彼等がアメリカ大陸の(欧州に行くのではなく)先住民グループとさらに接触しているのを目にすると思います。麻薬カルテルの問題は国際的です。従って、対応は国際的なものでなければなりません。

--インタビュアーはウリ゠ゴードン